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しじみ

一昨日、玄関にスズメの雛が落ちているのを、父が拾ってきた。
雛といっても、生後十日も経っていないだろう、まだ毛も生えていない、巣立ち前のとても小さな子。
目はまだ開いておらず、どうやら左足の動きが鈍い。
強風にあおられて、巣から落ちてしまったのだろうか。
翌日の天気予報は大雨だったこともあり、自宅で保護することにした。
スズメは野鳥だから、飼ってはいけないことはわかっている。
それでも、目の前で消えそうな命を見捨てることは、父にも私にもできなかった。

この記事の要点

一昨日、玄関にスズメの雛が落ちているのを、父が拾ってきた。雛といっても、生後十日も経っていないだろう、まだ毛も生えていない、巣立ち前のとても小さな子。

空き箱を見つけ、綿を敷き、カイロを置いて、その上にキッチンペーパーを敷き詰めた。
箱の中で、ずっとピーピーと鳴いている。
口を大きく開けて、親鳥からの餌を待っているようだったので、ご飯やゆで卵をすりつぶして与えた。

翌朝も、まだピーピーと鳴いていた。
餌を与えると、すぐに眠る。
その繰り返し。
けれど、昨日と比べると動きが鈍い。
左足は、ほとんど動かない。
父の通院に付き添って家を空けている間も、ずっと気がかりだった。
帰って箱を覗くと、ピーピーと鳴き出したので、ほっとした。
夜、仕事の打ち合わせの最中も、すぐ近くに置いていた。
ふと「しじみ」という言葉が浮かんで、雛に向かって「しじみ」と呼んでみると、ピーと鳴いた。

そして今朝。
一生懸命に呼吸をしているけれど、ほんの少ししか鳴かない。
口を開けるので餌を与えても、戻してしまう。
もう、命が消えそうだった。
父が見てくれている間、私は家事を済ませた。
合間にトイレへ立っては「スズメ 生存率」なんて検索して、涙が溢れてきた。
スズメが孵化する確率は、六割ほどだそうだ。
巣立ち、冬を越し、春を迎えられるのは、五割にも満たないという。
短い命だ。
ひと通り終えて箱を覗くと、しじみは幕を閉じていた。

通りすがりの命。
愛と悲しみと、命の使い方という課題を置いていった。
小さな体で、短い時間だったけれど、大きな置土産だ。
まずは、この文章を書いてみることにした。

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